庄原バイオマス事件３ 分岐点
更新 2023/02/20(月)
(C)文責 炭本 治之
■詐欺が成功できることになった分岐点
私は，
「特許出願書類を庄原市や国の職員に見せたこと」
だろうと思います。
これが国や庄原市の信頼を勝ち取るのに最も効果的だったのだろうと。
普通の人は，特許についての知識を全然持ち合わせていないと思います。
だから，普通の人は，西本哲郎・清宏兄弟が，
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 中国センターの研究員らを従えて，
特許出願していると知らされたら，
「凄い研究者だ！ 本物だ！」
と信じるでしょう。
■出願書類概要
糖化液製造方法及びエタノールの製造方法
発明者： 西本 徹郎
, 西本 清宏
, 藤川 直弘
, 遠藤 貴士
, 寺本 好邦
, 井上 宏之
, 矢野 伸一
出願人/特許権者： 株式会社ジュオン
, 独立行政法人産業技術総合研究所
代理人 (1件)： 佐藤 勝
公報種別：公開公報
出願番号（国際出願番号）：特願2006-290376
公開番号（公開出願番号）：特開2008-104404
出願日： 2006年10月25日
公開日（公表日）： 2008年05月08日
要約：
【課題】 本発明の課題は、リグノセルロース資源中に含まれる精油及び親水性
成分を流出させて、リグノセルロース資源中のセルロースと酵素とをより多く
接触させるこ とで、効率的に糖化液、エタノールを生成させる方法を提供する
ことにある。
【解決手段】 本発明は、水蒸気蒸留によって、セルロースの糖化を阻害するお
それのある精油及び親水性成分をリグノセルロース資源から流出させる。
そして、粉砕では、セルロースの結晶性が低下するため、リグノセルロース資
源の粉砕によって木質成分のネットワーク構造を破壊してミクロフィブリルの
一部を露出させ、セルロースの結晶性をも破壊する。したがって、セルロース
の酵素糖化反応が促進され、より効率的に糖化液を生成させることができる。
そして、生成した糖化液を醗酵させることで、より効率的にエタノールを生成
させることができる。【選択図】図1
出願書類としては本物です。
■出願内容はニセモノ
【発明の詳細な説明】【００１２】段落の末尾に次の記載があります。
「したがって、セルロースの酵素糖化反応が促進され、より効率的に糖化液を生成
させることができる。」
従来技術に比べてどれだけ効率的に糖化液を生成させることができるのか，
つまり，例えば1kgの木材を原料にした場合に，
①従来技術で生成する糖の量
②この発明で生成する糖の量
はどんな値になったのか。
その数値が記載されていない。
理論を述べるだけです。
だから，「具体性がない」との理由で拒絶され，特許査定されるはずないのです。
(従って審査請求していない)
■特許を利用する手口
私は特許出願して特許取得したことがあります。
出願前には，既存の出願を50件100件と読みます。
そうするとたくさん見つかります。
出願しているが審査請求していない日本特許出願。
特許取得しているが実用性のない技術など。
私は，自らの特許出願を紹介して，共同事業しませんかと提案してきた
社長と面談したことがあります。
「出願したのはいつですか？」
「審査請求しましたか？」
など，特許に関する初歩的な質問をしたら全然答えられなかった。
その社長はそれ以来まったく連絡してこなくなりました。
私の認識では，
どう考えても実用性のない技術で米国特許を取得し，
その実績で地方の国立大学の医学部教授に就任した，
という疑惑の人物も過去にいました。
地方の国立大学では，英語で論文を書く教授はほとんどいません。
特許を取得した教授もほとんどいないものです。
だから，米国特許取得は凄いと思ったのでしょう。
■詐欺や元市長の無責任が判明することになった分岐点
私は，
「NHK記者が，グリーンケミカル社の水増し請求を明らかにしたこと」
だろうと思います。
これが事件を解明する決定的なことだったと思います。
NHK記者が，グリーンケミカル社の水増し請求を明らかにした
↓
庄原市が，ジュオンとグリーンケミカル社の社長を刑事告訴した
↓
安佐南警察署の警察官，広島地検の検察官が，事件を詳細に調べ，
ジュオン社社長らが，庄原市と国をだましていたことが判明
元市長は，庄原市市議会で虚偽の説明していたと判明
↓
庄原市民の会が，監査請求し行政訴訟を起こした
↓
裁判所は，元市長の善管注意義務違反を認定した
記者という職業の人は，裁判の傍聴はしょっちゅうやっているので，
何が怪しいかに気づくし何を調査すればいいか見当がつくのでしょう。
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